ニュースの概要
Audibleが公表した10月9日終了週の米国ランキングで、著名人の声が目立った。ノンフィクション部門では、俳優マイケル・ダグラスの自叙伝や、バラク・オバマ関連のオリジナル作品が上位に入った。ヴァネッサ・ヴァン・エドワーズやアンドリュー・ヒューバーマンが自ら読んだ作品も並んでいる。フィクション部門の首位は、ジョナサン・ベイリーやエラ・パーネルらが出演する『ドラキュラ』のオーディオドラマ版だった。フリーダ・マクファデンやコリーン・フーヴァーといった人気作家の作品も上位に名を連ねた。朗読者の知名度や声の演技そのものが、作品選びの決め手になりつつある様子がうかがえる。
引用元: Audible週間ランキング、著名人の朗読・出演作品が上位に(The Associated Press)
分析・見解
本人の声で聞く自叙伝が、ノンフィクション上位を占めた理由
自叙伝は文字だけでも成り立つ。それでも本人の声で聞くと、言葉の間や息づかい、笑い混じりの口調まで届く。俳優マイケル・ダグラスが自らの人生を語る作品が上位に入ったのは、この「生の手ざわり」に対価を払う人がいるからだろう。
ヒューバーマンは、長時間の音声番組(=ポッドキャスト)で広く知られる。彼の声を聞き慣れた人にとって、本の朗読は普段の番組の延長にあたる。購入へのハードルが低く、ランキングに表れやすい。
ヴァン・エドワーズのように、人付き合いや話し方を扱う書き手が自分で読む点も見逃せない。内容と声が一致すると、説得力が一段増すからだ。
『ドラキュラ』は原作が公有でも、配役で差がつく
『ドラキュラ』は1897年に出た小説で、著作権はとうに切れている。誰でも作れる題材だ。それでも首位に立てたのは、ジョナサン・ベイリーやエラ・パーネルといった出演者の顔ぶれと、音の演出に力があったからだろう。映画の世界でも、同じ原作が何度も作り直され、そのたびに配役が話題を呼んできた。音声ドラマも同じ道をたどり始めたと言える。
朗読は一人の声で読み切る。ドラマは複数の俳優が演じ、足音や扉のきしみまで入る。制作費はかさむが、「耳で観る映画」として宣伝しやすい。
人気作家は物語の力で、著名人は声の力で上位に入る
フリーダ・マクファデンやコリーン・フーヴァーの作品は、すでに紙や電子書籍で多くの読者を持つ。物語の強さが先にあり、音声はそれを別の形で楽しむ入口になる。一方、著名人の作品は声や人柄が先にある。同じ上位でも、勝ち筋は二つに分かれている。
この違いは、音声化を考える側にとって大切だ。自社が持つ強みが「中身」なのか「語り手」なのかで、最初に投じる費用の置き場所が変わるからである。
人の声が希少になる時代に、耳の時間を奪い合う
音声は、運転や家事、散歩といった「手と目がふさがる時間」に聞かれる。この時間帯では、他の音声番組や音楽も競争相手になる。合成音声(=機械が作る声)が安く作れるようになるほど、実在の人物が自分で読んだという事実は、かえって特別な価値を帯びていく。
ただし、これは今後の傾向を探る仮説にすぎない。一週間のランキングだけで市場全体を語ることはできない。数週間続けて眺め、同じ顔ぶれが残るかを確かめる姿勢が必要である。
ビジネスへの影響
自社の「語り手」を前面に出す音声の使い方
中小企業でも、社長や現場の専門家が自分の声で話す音声は、文章より信頼が伝わりやすい。社内に詳しい人がいるなら、解説記事の要約を本人の声で録音し、サイトの記事に音声版として添えてみるとよい。ヒューバーマンのように、先に音声で聞き手を育て、のちに商品やサービスへつなぐ順序は参考になる。
音声は検索結果に出にくいという弱点もある。記事本文と文字起こしを必ず併せて掲載し、検索経由の入口を残しておきたい。
音声化の前に確かめたい三つの点
一つ目は、すでに読者や顧客がいるかどうか。人気作家型の強さは、既存のファンがいて初めて生きる。二つ目は、誰の声で届けるかである。声に個性と説得力がある人を選ぶ。三つ目は、制作費に見合う使い道があるかを考えること。
いきなり大作を作る必要はない。三分ほどの短い音声を数本つくり、再生数や最後まで聞かれた割合を見て、続けるかを決める進め方が現実的だ。
声の権利と契約で後から困らないために
本人の声を録音して公開する場合は、利用範囲と期間を書面で決めておく。退職後に音声が残り続けると揉めやすい。また、本人の声を合成音声の学習に使うかどうかも、最初に取り決めておくべき項目である。
